「鉄」
元素記号 Fe 電子番号 26 原子量 55.85 比重 7.86
鉄という金属は自然界に単体で存在することはめったになく、ほとんどが化合物として土壌・岩石・鉱物などの中に存在している。 なぜ単体で存在しないかというと、 Fe (鉄)原子はそれ自体では非常に不安定なため、酸素と結びついた酸化鉄の状態で存在しているからである。 なので製綱メーカーが鉄鉱石から鉄を取り出すときには、不純物と同時に酸化鉄から酸素も取り除いている。 取り出した鉄を放っておくと、安定した状態に戻ろうとしてすぐに 酸素と結び付く。 つまりはさびてしまう。
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「鉄」と「鋼」の違い
はっきり言うと違いはない。 一般的に「鉄」と呼んでいるのは、鋼のことである。 鋼とは、2% 以下の C (炭素)を含んだ鉄の合金のことで、ほかにも Mn (マンガン)や P (リン) S (硫黄)などを微量に含んでいる。 よほど特殊な目的以外、C (炭素)を含まない鉄は使用しない。 つまり、「鉄」と「鋼」に違いはないということである。 なお、鉄は炭素の含有量によって、純鉄、鋼( 0.03 〜 1.7% )、銑鉄( 1.7% )などと呼び分けられている。 鉄は炭素の量が多くなると硬さや耐磨耗性を増すのだが、逆にもろく(割れやすい)、錆びやすくなるという性質を持つ。 つまり炭素の量が少ないほど柔らかく、粘り強い鉄ということになる。
また、鉄は炭素だけでなく他の金属元素を加えたり熱処理を行うことによって、その強さや硬さや性質を自由に調節することができる。
炭素だけを主な合金元素とする「炭素鋼」とこれに炭素以外の合金、マンガン、珪素、ニッケル、クロム、等々の元素を加えて強くした鋼を「合金鋼」と呼んでいる。 そして、この合金鋼と炭素鋼の一部や高級炭素鋼を「特殊鋼」と呼び特殊な強さを要する場合に使用される。 鋼は適度な配合率とそれを補う他の金属元素の組み合わせによって様々な種類が作られるのである。
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ねじ関係の鉄の材料
名称 |
記号 |
用途 |
軟鋼線材 |
SWRM |
釘、リベット、ワリピンなど |
硬鋼線材 |
SWRH |
バネ座金など |
冷間圧造用炭素鋼線 |
SWCH |
小ねじ、ボルト、ナット タッピンねじなど |
機械構造用炭素鋼 |
S**C |
ボルト、ナットなど |
機械構造用合金鋼 |
SCM |
キャップ、高力ボルトなど |
冷間圧延鋼 |
SPCC |
平座金など |
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「一般構造用圧延鋼材」 SS**
切削加工に使用されている低炭素鋼。 C (炭素)と Mn (マンガン)の成分量にとくに規定は無く、P (りん)と S (いおう)の上限が 0.05% と定められているだけである。 靱性にすぐれており、冷間加工あるいは溶接加工、曲げ加工も可能。 これらには引張り強さを示す数値の規定がある。 溶接代表鋼種は、SS400 である。
SS−400 B D
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|| | | └→製造方法を表す記号。
|| | | 『 D 』は Drawn の頭文字で引抜き材又は磨き材の意味。
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|| | └→材料の形態を表します。
|| | 『 B 』は Bar で棒状であることを示す。
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|| └→材質の種別「主として、最低引張り強さ」を表す。
|| 400 は最低引張り強さ 400N/mm2以上 であることを意味している。
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|└→規格品と製品名の略号「主として英語、ローマ字の頭文字または、その組み合わせ」
| であり、『 S 』は Structure(構造用)の頭文字をとったもので、
| 一般構造圧延材の意味。
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└→材質名称「金属名称記号で材料名(英語)の頭文字または化学元素の記号」を示し、
『 S 』は Steel(鋼)の頭文字をとったもので、材質が鋼であることを示す。
C−3604 B D
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| | └→Bar-Drawn で引抜き棒を意味する。
| | ※参考: BE は押出棒。
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| └→4 桁の数字は合金成分の系統を表す。
| 「3604」は快削黄銅を意味している。
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└→材料記号を表すが、伸銅品関係ではアメリカ規格
にならって『 C 』の記号を用いる。
※参考
鉄鋼材料では、種類記号に続けて製造方法を示す記号が付記されることがある。
D ( Drawning ) |
冷間引き抜きの意味 |
T ( Cutting ) |
切削の意味 |
G ( Grinding ) |
研磨の意味 |
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「冷間圧造用炭素鋼線」
冷間圧造に最も多く使用されている炭素鋼は鋼の中では比較的容易に塑性加工が出来る材料で、線材を引抜き、伸線によって冷間加工を行い、若しくは焼き生し処理と組合わせて仕上げられた鋼線。 末尾記号の R (リムド鋼) 6 品・ A (アルミキルド鋼) 10 品・ K (キルド鋼) 21 品、の成分比率による特性を生かし量産のボルト・ナット・小ねじ等に広く使用されている。 炭素量が多くなるほど硬くなり、ボルト、小ねじの場合は 8.8 までの強度に適している。
S W(R) CH 10 R
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| | | | └→*末尾の R はリムド鋼入
| | | | *末尾の A はアルミキルド鋼入
| | | | *末尾の K はキルド鋼入
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| | | └→炭素含有量の中心値( % ) 12%
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| | └→冷間圧造を表す。
| | 『 C 』はCold『 H 』はHeadingの頭文字をとったもの。
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| └→WR の R は圧延材を表す。
| 『 W 』は Wire、『 R 』は Rod の頭文字をとったもの。
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└→材質を表します。
『 S 』は Steel (鋼)の頭文字をとったもので、
材質が鋼であることを示す。
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「機械構造用合金鋼」
特に焼入れ硬化性・靭性が高く優れている材料。 JIS 規格の鋼種記号は 含有される合金成分が単一の場合は元素記号をそのまま、2 種類以上の時は元素記号の始めの文字を組み合せ + 合金含有量のレベルコ-ド + 炭素量の中心値の100倍の数値 の順の型番で表示する。
SMn 4 38(マンガン鋼)
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| | └→C = 0.34 〜 0.41
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| └→Mn = 1.3 〜 1.70
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└→合金成分 - マンガン( Mn )
SCM 4 35(クロムモリブデン)
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| | └→C = 0.33 〜 0.38
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| └→Cr = 0.85 〜 1.25 ・ Mo = 0.15 〜 0.35
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└→合金成分 - クロム( Cr )・モリブデン( Mo )
SCr 4 15(クロム鋼)
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| | └→C = 0.12 〜 0.18
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| └→Cr = 0.85 〜 1.25
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└→合金成分 - クロム( Cr )
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小ネジやタッピンネジの材料
「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」
SWCH とは
Carbon steel wire for
cold heading and cold forging
Carbon steel 炭素鋼
wire 線
cold 冷間
heading 圧造
の頭文字をとったもの。
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「SWRCH」と「SWCH」の違い
SWRCHからSWCHが作られる。 SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材
SWRCHは冷間圧造用炭素鋼線材
‖
Carbon steel wire rods for
cold heading and cold forging
製鋼メーカー(神戸製綱や新日鐵など)で作る線の材料。
SWCHは冷間圧造用炭素鋼線
‖
Carbon steel wire for cold
heading and cold forging
伸線メーカー(オーアンドケーなど)で作るネジの材料。
Rとは「rods=材料」のこと。 「冷間圧造用炭素鋼線:SWCH」
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「冷間圧造用炭素鋼」の種類
「キルド鋼」と「リムド鋼」がある。
溶けている素材(溶鋼)を固めるときの方法によって「キルド鋼」と「リムド 鋼」に分類される。 キルド鋼には「アルミキルド鋼」と「シリコンキルド鋼」があるが、ねじには「アルミキルド鋼」を使用するのが一般的である。 なお、SWCH は C (炭素)の含有量によって数十種類に分かれるが、引張強さの規定はない。
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「キルド鋼」
キルド鋼とは、溶鋼の中にアルミニウムなどを添加し充分脱酸(溶鋼中に含まれている酸素を除去する事)を行って鋳込んだ 鋼塊(鋼のかたまり:インゴッド)から作った鋼材のことである。 脱酸が充分に効いているので、固まるときガスの放出がなく静かに凝固する。 つまりその様子が死んだように静かな鋼ということでキルド( Killed )鋼と呼ばれている。 気泡がなく組織は大体均一で優良な性質を備えているため、高級鋼や合金鋼は全てキルド鋼で作られている。
例えばキルド鋼には、タッピンネジに使う SWCH18A などがあるが、後ろにつく 18A の 18 とは 0.18% の C (炭素)が含まれ、A はアルミキルド鋼という意味である。
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「リムド鋼」
リムド鋼とは、溶鋼をそのまま鋼塊に鋳込んだものである。 脱酸用の添加材を使用していないため、鋳込み及び凝固中にガスを放出し、火花を散らしながら外側から固まり、表面にリム層という層ができることから「リムド鋼」と呼ばれている。 リムとは「ふち」のことで、リムド鋼とはふち付き鋼という意味である。 キルド鋼に比べると若干不均一だが使用上は問題なく、一般のボルトやナットに大量に使用されている。
例えばリムド鋼には SWCH10R などがあるが、この場合の 10R は 0.10% の C (炭素)が含まれ、R はリムド鋼という意味である。
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「12.9」とは何を示すか?
「12.9」とは数値ではなく、
小数点の左の数字と右の 数字がそれぞれボルトの強さを表している。
左の『12』が「120 キロまで切れない」という強さを表しており、 これを「最小引張荷重」という。
右の『9』が「120 キロの 9 割 → 108 キロまでは伸びても元に戻る」 という強さを表して(108 キロを超えると伸びきって元には戻らない)おり、これを「降伏荷重」または「耐力」という。
変形しても元にもどる →弾性変形
変形して元にもどらない→塑性変形
例えば、「ねじがバカになる」というのも塑性変形。
「10.9」→100 キロまで切れずに 9 割の 90 キロまで元に戻る
「8.8」→ 80 キロまで切れずに 8 割の 64 キロまで元に戻る
「4.6」→ 40 キロまで切れずに 6 割の 24 キロまで元に戻る
JIS 規格では、次の 10 種類の強度区分が定められている。
3.6 4.6 4.8 5.6 5.8
6.8 8.8 9.8 10.9 12.9
力の単位は、1平方ミリメートルあたり。
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「機械構造用炭素鋼」 S**C
高炭素鋼。 SWCH と構成成分は同等で C (炭素)を多く含む鋼。 引張強さの規定がある。
「 S45C 」は 0.45% 、「 S35C 」は 0.35% の C (炭素)を含むことを表している。
焼き入れ性がよく、強度区分 8.8 などのボルトに使用される。
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「機械構造用合金鋼」
「ニッケルクロム鋼鋼材」 SNC***
「ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材」 SNCM***
「クロムモリブデン鋼鋼材」 SCM***
「高温用合金鋼ボルト材」 SNB**
高炭素鋼に Ni (ニッケル) Cr (クロム)と Mo (モリブデン)などを添加して焼き入れ性を良くした合金鋼。 焼き戻しに対する特性も良いので、熱処理(調質)をして高強度を出すことができる。 SWCH10R で作ったボルトが通常、強度区分 4.8 なのに対して、SCM435 で作って調質した六角穴付ボルトは強度区分 12.9 で簡単に言うと 3 倍の強さがある。
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「硫黄快削鋼鋼材」 SUM**
一般的に「快削鋼」と呼ばれている。 S (いおう)を多く添加することによって被削性を向上させた低炭素鋼。 また Pb (鉛)の添加によってさらに被削性を向上させたものもある。 引張強さの規定はない。 切削は良好だが、曲げ加工には向かず、溶接加工性も良くない。
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「アロイ合金」
鋼の耐食性・耐熱性を良くするため合金元素を多量に添加して、鉄が 50% 以下になった合金。
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「ボロン鋼」
炭素鋼にボロン(ほう素)を極微量( 0.003% 以下)添加して鋼の焼入れ性を増大し、焼きが入り易くしたもの。 近年では合金鋼の代替として、ねじ・自動車部品等に使用されている。 現在、ボロン鋼を B 鋼といって鋼種記号には B を付記する。
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「SS400」
靱性にすぐれ、冷間加工あるいは溶接が容易という特性を持つ。 表記中の数値は引張り強さを示している。 圧延したままの素材に機械加工を行ない、熱処理はしないで使用される。 被削面において一般的に切削は容易だが溶着し易く、特に炭素含有率の低いものは切削面の平滑性や面粗度が悪くなる場合がある。
用途 = 建築、橋、船舶、車両その他構造物。
また、比較的強度を必要としないフランジ、ピン、ボルト、ナット、レバー、軸類、歯車など。
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「SCM435H (焼入)」
特性は炭素鋼に較べて焼入性に優れるので
( 1 ) 大型部品でも深く焼きが入り、焼もどすと均質な組織が得られ、優れた強度と靱性を得られる。
( 2 ) 無理な冷却をする必要がなく、残留応力の発生を軽減できる。
用途 = 軸類、歯車類、ボルト、ナット、連結棒、スタッドなど。
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「S45C」
冷間加工性、溶接性がやや悪く、焼入れによる硬化の程度が比較的大きいとう特性を持つ。 比重は 7.8 炭素鋼の中でも「中炭素鋼」に属し、切削性は良好。 焼なまし、または焼入れ焼もどしによって適宜に必要な強さと靱性が得られるが C 値が、0.3% より少なくても多くても被削性が悪くなる。 炭素鋼の中では切削性が比較的良好で、構成刃先の発生も少なく、仕上げ面粗さや寸法の管理もしやすい。
末尾の「 A 」は焼入れなし・「 H 」は焼入れ品を表す。
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「SKD4」
特徴は高速度鋼に似た高合金鋼(合金元素の合計量が10[mass%]以上の合金鋼)で、炭素含有量が低くタングステンを多く含有している為、耐摩耗性は高いが常温での耐衝撃性がかなり低くなる。 また切削時に温度が上昇しやすく、合金中に形成される炭化物は、アブレシブ物質として工具摩耗を促進させる。
用途 = プレス型・ダイカスト型押出工具・シャープレードなど。
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